名雪と思い出


俺と名雪は、丁度日が沈んだ頃家に着いた。
そこで待ち受けていたのは秋子さん。

秋子「あら随分と吟味してきたのね」

笑顔で頬に手を当ててさらりと言う。
秋子さんはいつも笑顔なので怒っているのかどうかが全然分からない。

名雪「……ううん、ちょっと色々あって…」
祐一「………」

俺は何も言えなかった。
あゆという迷惑少女に連れまわされたとはいえ名雪を待っていなかったのも事実。
話がややこしくなるから大人しく名雪に謝った。
名雪は『もういいよ』と言って許してくれたが、顔が許していなかった。

秋子「すぐご飯作っちゃうから待っててね」

秋子さんは何事も無かったかのように優しい口調で言った。

名雪「あ、私も手伝うよ」
祐一「…じゃあ俺も手伝います」

一人で夕飯までのほのんとしているわけにはいかなかった。
仕方なく俺は皿でも並べてることにした…。


秋子さんの美味しい夕飯を食べ終わると特にすることもなかったので俺は部屋へと戻った。
部屋に入ると凍えるような寒さが襲ってきた。
すぐさまエアコンをつけて暖をとる。
はぁ〜、と大きく溜息をついてベッドに仰向けに寝転がる。
なんだか今日は疲れた…。
見知らぬ少女にいきなりぶつかってこられてさんざ振り回された。
そのお陰で名雪を怒らせちゃったし…。
なんだか今日はついていなかったな…。 そんな風に思っていると部屋をノックする音が聴こえた。

祐一「あ、どうぞ」

名雪だ。
俺はちょっと気まずい面持ちで入ってくる名雪を見据える。

名雪「祐一、今いい?」
祐一「ああ、別に大丈夫だ」

名雪は特に怒っている様子は無かった。
今日のことは本当に許してくれたのだろうか。

名雪「今日のことだけど…」
祐一「あ、いや、あれはホント俺が悪かった…」

名雪に何か言われる前に謝った。

名雪「もういいよ。 昨日私も待たせちゃったし、おあいこだよ」
祐一「そうか…よかった…」

どうやら本当に許してくれたようだ。
俺は心の中で『ホッ』と安堵の溜息を吐いた。

名雪「それより昔も今日みたいなことなかった?」
祐一「え? 昔? 俺が昔ここにいた時のことか?」
名雪「うん。 あの頃も私商店街で祐一を待ってたことあったよ」
祐一「そうだったか? 俺は覚えてないけど…」

場を濁すわけではないが、俺は本当に覚えていなかった。
そもそもどうして名雪はこうも昔のことを覚えているのだろうか。
それとも単に俺の記憶力が悪いだけなのか…。

名雪「そう…覚えてないんだ……覚えてないならいいけど…」
祐一「……すまん」

俺は残念そうに言う名雪につい謝ってしまった。

名雪「あ、明日学校だから忘れないようにね」
祐一「え、ああ、分かってる…」

笑顔の名雪が部屋から出て行く。
と、俺はこの部屋には目覚まし時計がないことを思い出した。

祐一「あ! そうだ、名雪」
名雪「…ん?」
祐一「目覚まし時計貸してくれないか?」
名雪「目覚まし? うん、いいよ。 じゃあ私の部屋に来て」
祐一「ああ、分かった」

俺は名雪に言われベッドから降りる。
朝に弱い俺にとって目覚ましは必需品。
これなくして起きることはできない。

名雪「いくつあればいいかな?」
祐一「いくつ? ひとつあれば十分だ」
名雪「遠慮しなくてもいいよ」
祐一「いや遠慮も何も無いだろ…」

相変らず変なことを言うやつだな、俺はそう思った。
名雪は自分の部屋に入るなり3つの目覚まし時計を抱えて戻ってきた。

名雪「どれでもお好きなのをどうぞ」
祐一「そうか、う〜ん……どれでもいいんだが…」

名雪の腕には小さい安っぽいの、クマの形をした可愛らしいの、機械的な形の大きいのの3つがあった。

名雪「う〜ん、それじゃあこれを貸してあげるよ」
祐一「ああ、暫く借りておくけどいいか?」
名雪「うん、ずっと借りててもいいよ」

俺は部屋に戻り早速目覚ましをセットした。

祐一「何時にセットするか……とりあえず7時で十分だろ」

俺は目覚ましを朝7時にセットし、机の上に置く。
これで明日の朝は起きれるだろう。
俺はその後適当に明日の支度をし、床に着くことにした。
丁度夜中の0時、俺は深い眠りに誘われた……。



        

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