街の少女


次の日、俺たちは朝早く家を出た。
外は一面の銀世界だった。
昨夜も雪が降ったのか、10センチ程度積もっている。
家の外へ出るなり真冬の寒さが襲って来た。

祐一「うう〜、寒……お前は寒くないのか…?」

横で名雪が何ともなさそうに歩いている。

名雪「そりゃ寒いよ」
祐一「でも全然寒そうじゃないぞ」
名雪「寒い寒いって言ってると寒くなるから」
祐一「今時そんな迷信信じてる奴いたのかよ…」
名雪「心頭滅却すれば火もまた涼しって言うじゃん」
祐一「だからそれも迷信。 暑いものは暑い、寒いものは寒い、これ当然の真理」

名雪が半信半疑ながらも納得する。
こんなくだらない論争してると益々寒くなる。
雪を踏む度ギュッギュッと小気味良い音がする。
俺が以前住んでいた町は殆ど雪は降らなかった。
それ故、雪となるとどこか心がウキウキしてくる。
名雪はそんなこと微塵も思っていないようだが…。

名雪「ところで祐一は学校がどこにあるか知ってるの?」
祐一「俺の行く高校か? 小さい頃何度か通ったことがあるから分かると思うが」

小さい頃の記憶故どこにあったかまで正確な位置は覚えていない。
けれどおおよその位置なら分かるだろう。

名雪「それじゃあ帰りにちょっと見ていく?」
祐一「商店街から近いのか?」
名雪「う〜ん、ちょっと遠いかな…?」
祐一「それじゃあいい。 どうせ明日から行くことになるんだからな」

この街は俺にとっては寒すぎる。
一秒だって余計にこんな外を歩いていたくない。
こんなことならもっと厚着してくるべきだったな。
と、そんなこんなしてるうちに商店街に到着した。

名雪「着いたよ、商店街」
祐一「着いたな、商店街」
名雪「う〜、もっと何か言うこと無いの?」
祐一「商店街に着いたからっていちいち感動してられるほど俺はお気楽じゃない」
名雪「なんか祐一、変わったね…」

ちょっと不機嫌そうに振舞う名雪。
俺はそんなに変わったのだろうか。
俺自身は変わりは無いと思うが、幼馴染みの名雪から見れば変わったように見えるのかもしれない。
でもまあそれは時の流れと成長による変化とも言えるだろう。

名雪「それじゃあ、ちょっと買ってくるからここで待っててね」
祐一「おいおい、俺をこんな寒空で待たせる気か?」
名雪「じゃあ一緒に行く?」
祐一「…いや、ここで待ってる」
名雪「それじゃあここから離れないでね」
祐一「はいはい、早く戻って来いよ」

そう言うと名雪は商店街の奥へと消えていった。
俺は商店街の入り口で待たされている。
しかしこんな寒い中結構人が多いもんだな〜。
日曜だからか多いのか?
まあ俺はこんな寒い中わざわざ外へ買い物へ行く気になれない。
名雪に誘われなければ今日はずっと家の中にいたことだろう。
俺は極度の寒がり、それ故一番嫌いな季節が冬。
早く冬が終わって欲しいと思う今日この頃だ。


と、車止めに半分腰をかけて丸くなってると、遠くから誰かが走ってくる。
少女だ。
年頃は俺と同じか、ひとつふたつ下といったところだろうか。
と、走りながら何かを言ってるのが分かる。

少女「どいてどいて! そこの人どいてーー!!」
祐一「……え、俺?」
少女「どいてーーーー!!」
祐一「うわ! こ、こっち来んな!!」
少女「うわ〜〜!!」


バン!!


鈍い痛みと共に俺の体が後ろへ倒れて行くのが分かる。
そして雪の上に倒れこみ、その上に少女も倒れ掛かってくる。
ゆっくりと、スローモーションのようにその光景が脳裏に浮かんでくる…。



        

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