家族の意味


オルゴールの想い出に耽っていると夕飯になり1階へと降りてきた。
そういえば小さい頃はたまにこの家で夕飯をご馳走になったこともあったっけ。
それが今日からは毎日続く。
そう思うとなんだかこの縁が不思議なものに思えてくる。
ついこの間までまさかこんなことになるとは思っても見なかった。
父親の急な海外転勤が、俺の運命を変えたのだ。

冬。
廊下にいると寒さが身に沁みる。
俺はいそいそと居間に入った。

秋子「あ、祐一さん。 もうお夕飯の準備できてますよ」
祐一「すいません、ちょっと想い出に耽ってたから遅くなりました」
秋子「あら、想い出なんて随分楽しそうね」
祐一「ええ、まあ…」

秋子さんが楽しそうに言う。
もう既にそこには名雪がいた。
どうやら二人とも俺を待っててくれたようだ。

祐一「あれ? 待っててくれたんですか?」
秋子「ええ、そうよ。 今日が家族みんなでする食事第一号だから」

家族みんなで…?
そうか、俺は秋子さんと約束したもんな。
この水瀬家の家族になるって。
そして男になってこの二人を守っていくんだ。
俺は用意された席に着いた。

秋子「それじゃあ、いただきましょう」
祐一「はい」
名雪「うん!」

3人でそろっていただきますをする。
二人とも笑顔だ。
この二人はずっと二人っきりでこうやって食事をしていたんだろうな。
そう思うと何故だか心が痛んだ。

名雪「ん? どうしたの? 祐一」
祐一「え? あ、いや、なんでもない…」
秋子「ビーフシチューは嫌いだった?」
祐一「いえ、好きですよ…」
秋子「そう。 ならいいけど」

スプーンを持ち、ビーフシチューを眺めながら考え事するのはよくないな(笑)
そりゃあ嫌いだと思われても仕方ない。
俺は食事に集中することにした。

祐一「うん、このビーフシチュー、美味しいですよ」
秋子「そう言ってもらえると嬉しいわ」
名雪「うちのお母さんの作るビーフシチューは最高だもんね」

確かにこのビーフシチューは最高に美味い。
その辺の洋食屋のものよりも数倍美味いだろう。
俺自身、こんなに美味いビーフシチューは生まれてこの方食ったことが無い。
それぐらい美味いものだ。
となると学校へ持っていく弁当の方の期待が膨らむ一方だ。
こりゃ学校が楽しみだな…。

名雪「お母さん、明日商店街へ買い物に行ってくるから」
秋子「あらそう。 祐一さんと一緒に?」
名雪「うん、そうだよ」
秋子「あらデート? いいわね〜、若いって」
祐一「え!? ち、違います、俺はただの付き添いですよ」
名雪「…そんなに強く否定しなくてもいいのに……」

ああ…名雪がまた機嫌を損ねてしまったようだ…。
ちょっと恥ずかしかったからつい強く言っちゃっただけなのに…。
まあ名雪のことだからすぐに忘れることだろう。

秋子「ところで祐一さんは学校の教科書はもう準備できてるの」
祐一「一応前の学校の教科書を持って行ってみます」
名雪「それならうちの学校で使ってる教科書かどうか私が見てあげるよ」
祐一「ああ、そうしてくれると有り難い」

何気ない食事の風景。
何故だか俺は居心地のよさを感じていた。
7年前以来の、このイトコの家に…。



        

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