懐かしのメロディー


名雪「はい、この部屋使っていいよ」
祐一「おう。 案外広いんだな」
名雪「8畳の広さがあったと思うよ…確か」

部屋には既にベッドと机が一基置かれていた。
物は中古らしいが、見た目はかなり綺麗で新品同様だ。

祐一「それじゃあ荷物を運ぶとするか…」

俺は1階へ降りると手ごろなダンボールをひとつ持って2階へ上がった。

祐一「ふう、疲れたな…」
名雪「みたいね……」

部屋のベッドに腰掛けて笑顔で言う名雪。
俺はその姿になんだか知らないが腹が立った。

祐一「おい、名雪も手伝えよ」
名雪「え? なんで?」
祐一「なんでって…俺一人じゃ大変だからだ」

俺は当然の理由を言った。
すると名雪はしぶしぶ承知して俺と1階へと降りてきた。

名雪「すごい数のダンボールだよね…」
祐一「そうだ、だから手伝ってもらうんだ」
名雪「しょうがないな…」

二人で1階と2階を往復すること5回、なんとか荷物を全部運び終えた。

名雪「ふぅ〜、疲れた…」
祐一「お前もか?」
名雪「うん。 この貸しはいつか返してもらうからね」
祐一「はいはい、分かってますよ」
名雪「それじゃあ私は部屋に戻るから」
祐一「ああ…助かったよ」

俺が礼を言うと名雪は部屋を後にした。
さて、この山積みの荷物を片付けるとするか…。

祐一「……しかし、名雪もよく覚えてたよな…あの約束」
祐一「すっかり忘れてると思ったけど」
祐一「父さんもいつもうまい具合に転勤になってくれるよな」
祐一「名雪も秋子さんも全然変わってなかったし…」
祐一「……さっきから独り言ばっかりだ…やめよう…」

俺は片づけに集中することにした。
とりあえず全てのダンボールを開けて中身を確認する。
日用品から雑貨、参考書類まで家にあったあらゆるものを詰め込んできた。
当面の間、ここでお世話になることになると思ってありったけの物を持ってきた。
そして片っ端から荷を出し、片付けてゆく。


     30分後……


片付けも殆ど終わり、残すはダンボール一箱。

祐一「よ〜し、これで最後だ」

最後のダンボールの中身を出す。
ここには古いものが入っていた。
昔使っていたオモチャやプラモデル、絵本など…。

祐一「何で俺はこんな物を持ってきたのだ…?」

この荷を詰め込んだ時の俺に疑問を抱く俺。
この荷はもう封印しよう、そう思った時だった。
なんだか懐かしい、見覚えのある物が見えた。
中からそれを取り出すと、それは薄汚い木箱に入ったオルゴールだった。

祐一「これは…あの時の……」

俺はなんとなくそのオルゴールを鳴らしてみた。


     リンリリリンリン〜♪
       リリリンリンリンリン〜♪


それは7年前、俺が引越しする時に名雪に貰ったオルゴールだった。
名雪が大切にしていた宝物だった。
暫くは机の上に飾ったりしてたっけ…。
けれども、いつしかこのオルゴールは忘れ去られ、昔のオモチャと一緒に仕舞われてしまったのだ…。
俺は暫しその懐かしの音に耳を傾けていた。
それももう過去の思い出だが、今は運命的にもこうして名雪の家でこの音色を聞いている。
俺たちには何か縁があるのかもしれない。
心がキュンとなるのが分かった…。
当時の純粋な俺に、戻ったかのような気分…。
何とも心地よい音色が、部屋に響く。
優しいその音色は、名雪の優しさ、そのものだったのだろう……。



        

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